ちょっと隠れたロックアーティストを紹介しているこの番組。
先週まで、イギリスのパブ・ロックシーンで活躍したアーティストたちを
特集してきましたが、今週からは、1960年代後半にニューヨークから登場した
バンド、ヴェルベット・アンダーグラウンド(The Velvet Underground)に
スポットを当てていきます。
第一回は、デビューアルバム『ヴェルベット・アンダーグラウンド&ニコ
(The Velvet Underground & Nico)』をピックアップ!
バンドは1965年にルー・リードとジョン・ケイルの二人を中心に結成。
ルーは当時、すでに駆け出しながらプロの作曲家として活動し、かたやジョンは
幼い頃から現代音楽を学び、テレビやラジオから流れるポピュラーな音楽とは
縁のないところで育ってきました。
そんな相反する二人が出会い、そこから生まれる音楽は
決して大衆的ではありませんでしたが、20世紀を代表するポップアートの巨匠、
アンディ・ウォーホルの目に止まります。
その頃、映像、ダンス、そして、音楽が融合するアートイベント(Exploding
Plastic Inevitable)を計画していた彼にとって、ヴェルベッツは理想のバンド
だったのです。
これを機会に、ウォーホルはバンドのスポンサー的存在となり、
彼らの音楽性や活動方法などに、ほとんど口を出しませんでしたが、
唯一出した願いは、パリ、ロンドンを経て、ニューヨークに辿り着いた謎の女性、
ニコ(Nico)をメンバーに加えることでした。
こうして、彼女を加えて制作され、1967年にリリースされたのがデビューアルバム
『ヴェルベット・アンダーグラウンド&ニコ』です。
アンディ・ウォーホルデザインによるバナナのジャケットだけでも強烈な
インパクトを与えるこのアルバム。
現在でこそ、ロックの名盤として重要視され、また、有名、無名問わず、
世界中にロックキッズという火種を蒔いた作品ですが、発売当時は
まったくといっていいほど話題にならなかったのです(最高171位)。
彼らが歌うテーマは同性愛、ドラッグなど、現実ながら誰も取り上げない都会の
影の部分が中心なので、キャッチーさ、というものからはほど遠いものでした。
ですが、ウォーホルはルーに、さらに「おおげさに、汚い歌詞で」この路線を
歌っていくよう指示し、バンドの方向性をプロデュースしていきます。
こういったアドバイスがデビューアルバムのプロデューサーに
ウォーホルの名前がクレジットされている理由なのです。
さて、ほぼ、強制的にニコを加えさせられてデビューしたヴェルベッツですが、
やはり今後の活動には彼女を必要とせず、また、彼女の興味もモデルのほうに傾き、
このアルバムのみで脱退してしまいます。
そして、その後、アンディとヴェルベッツが出会うきっかけとなった
アートイベントも全米各地で回数を重ね、終了します。
そのときには、お互いがもう、お互いを必要としない新たな方向性に
向かっていたので自然と別れることになります。
こうしてアンディのもとを離れたヴェルベッツは、
さらにアバンギャルドな方向に向かいます。
〈オンエア・ソングリスト〉
1. Sunday Morning
2. I'm Waiting For The Man
3. I'll Be Your Mirror
4. Heroin