これまで特集してきた
U.K.パンクの嵐のあと、1979年頃
巻き起こった
ニュー・ウェイブと呼ばれる時代に登場した
個性溢れるバンドを紹介しています。
今回ピックアップするのは
ザ・ポップ・グループ(THE POP GROUP)。
演奏テクニックの無さを、溢れる芸術センスと好奇心で埋め尽くした結晶が、
1979年の1stアルバム
『Y(最後の警告)』。
このアルバムは、ジャンル識別不能なアバンギャルド・ミュージック
の元祖として、今も異彩を放っています。
ポップグループはもともと、1976年頃、
英・ブリストルの高校に通う同級生
3人で結成したバンドに2人が加わって、デビュー時のラインナップが揃う。
当初は
パーラメント/ファンカデリックのようなファンクをやりたかったそう
なのだが、演奏力が追いつかなかったことと、父親がミュージシャンだった
メンバーの家にある膨大なレコードから、ありとあらゆるジャンルのレコード
を聞き漁っていくうちに、当時のパンク・シーンとは一線を画した音楽センス
を身につけていくこととなります。
そこに、古くからジャマイカからの移民が多く住んでいるブリストルという街で
育った彼らがごく自然に吸収していたレゲエやダブを取り入れていったようです。
彼らが地元でライブ活動を開始した頃、ロンドン5大パンクバンドの一つ、
ストラングラーズがブリストルでライブをすることとなり、
そのオープニング・アクトを努め、彼らの演奏を見たストラングラーズのメンバー、
マネージャーともに気に入り、マネージャー自らマネージメントを買って出たことで、
メジャー契約を果たすことになり、デビューアルバムの製作を開始。
プロデューサーには当時、白人バンドには珍しいレゲエミュージシャンを起用。
彼はこのアルバム制作にレゲエのレコーディング方法を取り入れ、
さらに斬新だったのがテープをバラバラに切り刻み、縦横に繋ぎ合わせるという
驚きの手法を使って、バンドの持つ
「ファンク」的なサウンドや、
過激な
「パンク」的一面、それに
「現代音楽」「フリージャズ」的要素などを
ゴッタ煮にしていった結果生まれたのが、デビューアルバム『Y』。
リリースされた1979年当時、人類未体験の捕らえどころのない音楽と、
どこかのジャングルの奥地に棲んでいる原住民族の写真のようなミステリアスな
ジャケットともども、かってないユニークで前衛的な問題作として物議を醸しました。
バンドはその後、ボーカルのマークと他のメンバーとの摩擦が次第に大きくなり、
セカンドアルバムと編集盤1枚を残して、1980年7月に解散しますが、
このわずかな活動期間に残した、
大衆音楽集団というグループによる
反大衆音楽の世界に踏み入れてみてください!
〈オンエア・ソングリスト〉
1. Thief of Fire
2. We Are Time
3. She Is Beyond Good and Evil
4. The Boy From Brazil