ちょっと隠れたロックアーティストを紹介しているこの番組では、1960年代後半にニューヨークから登場したバンド、ヴェルベット・アンダーグラウンド
(The Velvet Underground)にスポットを当てています。
第三回は、3 rdアルバム『ヴェルベット・アンダーグラウンドⅢ(The Velvet Underground)』をピックアップ!
これまで彼らはルー・リード、ジョン・ケイルの二人が持つ異なる音楽性が
ぶつかり、融合することで、いままでにないアバンギャルドなロックを
発表してきましたが、2 ndアルバム発表後、中心人物の1人、
ジョン・ケイルが脱退。彼の抜けた穴を埋めるため、新メンバーを迎え、
ルー・リード単独主導による新生ヴェルベット・アンダーグラウンドとなって
初のアルバムが、このサードアルバムです。
内容は、彼らのこれまでの持ち味だったノイズ・ギターや即興演奏は
すっかり影を潜め、かわって、クリーンなギターと、ポップな楽曲が並び、
一聴すると「別バンド」の作品です。この方向転換の原因は、
もちろん、ルーのポピュラー指向もあったと思うのですが、
それに拍車をかけたのが新メンバー、ダグ・ユールの存在だったのです。
彼は結成当初からのヴェルベッツのファンで、自身もバンドを組んで
活動していたところを当時のヴェルベッツのマネージャーにスカウトされて、
新メンバーとして加入することになったのです。彼はベース、ギター、キーボード
などを器用にこなし、音楽性は凄くポップ指向で、ルーのクローンとも言える存在。
そんなルーに逆らうことのないメンバーの参加が、これまでのヒリヒリするような
衝突が伝わってくるような即興演奏が消えた理由です。
この落ち着いたアルバムは、あたかもルー自身の精神状態を表している
かのようにも思えます。
ですが、当時、ルー本人は決して伸び伸びとした状態ではなく、
ヴォーカルを取りたがらないドラマーに無理矢理歌わせて、バンド内の新たな
方向性を見出そうとリーダーとしての使命感を背負い、必死でバンドの舵取りを
していたそうです。
この新生ヴェルベット・アンダーグラウンドによるサードアルバム。
彼ら特有の危険性が抜けたため、ファンの評価は低い作品になっています。
ですが、これまでのようなテンションの作品を発表し続けてたら、
きっと、ルー・リードはとっくに燃え尽きてますよ(笑)
実際、危険度は少くなりましたが、「ペイル・ブルー・アイズ」を
はじめ、名曲と呼べる美しいバラードやポップなナンバーが入っていて、
メロディ・メーカーとしてのルー・リードの才能が一番よくわかる作品だと
思うので、僕は好きです!
〈オンエア・ソングリスト〉
1. Candy says
2. What Goes On
3. Pale Blue Eyes
4. After Hours