ちょっと隠れたロックアーティストを紹介しているこの番組では現在、1975年頃、N.Y.のライブハウス・シーンで巻き起こったパンクム−ブメントから登場した
アーティストたちを紹介しています!
今回から「パンクの女王」こと、
パティ・スミス(Patti Smith)を
特集していきます。
第1回は、1975年のデビューアルバム
『ホーセス(Horses)』をピックアップ!
1946年イリノイ州シカゴで生まれ、ニュージャージー州のピットマンという
田舎の町で育ち、幼い頃から独自のセンスを持っていたため、
学校や周りの人たちと、あまり馴染めずにいたのですが、ボブ・ディラン
の歌と出会い、芸術家として生きていく道を考え、さらに彼女の人生を
大きく変えたのはフランスが生んだ天才詩人、アルチュール・ランボーの
詩集でした。彼女にとってランボーは神のような存在となり、その影響から、
ついにアーティストとして生きる道を選んだのです。
ニュージャージーでいくつかの波乱を乗り越えて、1967年、彼女は
わずかな現金を手に、一人ニューヨークへと旅立ったのでした。
ニューヨークに着いたものの、仕事も住みかのあてもない彼女は、
写真家志望の青年ロバート・メイプルソープや、のちにテレヴィジョンを結成する
トム・ヴァーラインら、さまざまな芸術家と出会いによって、刺激を受け、
生活していきます。
70年代にはいるとパティは、教会でエレキ・ギターによる伴奏をバックに、
詩の朗読会を始めます。そのギタリストが、のちのち彼女にとって
サウンド・パートナーとなるレニー・ケイでした。
これ以降、彼女たちは言葉遊び的なパフォーマンスや即興演奏などを取り入れて、
N.Y.のアンダーグラウンドシーンで注目を集め始めます。
そしていよいよ自分たちで資金を集め、自主制作でレコードを製作することに
なりました。この自主制作という発想は当時ほとんどなかっただけに、
音楽界全体に大きな影響を与え、彼女の名はメジャー・レーベルのオーナーたち
にも知られるようになります。
そして、「創作上の口出しはいっさいしない」というレコード会社側の条件で
見事契約。こうして発売されたのが、『ホーセス』です。
このアルバム、“N.Y.パンクを語る上ではずすことのできない名盤”などと
世間でいわれる1枚ですが、音楽的には彼女の活動の原点である朗読や、
60年代のガレージ・ロックに近いので、前回のテレヴィジョン同様、
熱く激しいパンクロックを期待される方には、オススメできません。
「じゃあ、なんでパンク名盤なんじゃい!?」と訊かれると、
このアルバムには彼女ならではの宗教観や、シュールな詩世界が広がっていて、
そこには「売れるための音楽」という打算はまったくなく、
「彼女が表現したいこと」が詰まった“D.I.Y.精神”に溢れたアルバムなのです。
彼女のアルバムで最も、「パティ・スミス」という人物が浮き彫りになった
作品だと思います。
ここでは彼女の素晴らしさを書ききることは出来ませんでしたが、
音楽シーンでのスタンスなど、ホンマ格好いいんです!
さて、この『ホーセス』、音楽的にキャッチーではないので、
ラジオ・オンエアなどは、ほとんどなかったのですが、全米アルバム
チャート・トップ50に入る健闘を見せ、また、評論家たちからも絶賛されて、
N.Y.アンダーグラウンドシーンから登場した彼女の名前は一躍、
全米に知れ渡るようになりました。
そして、彼女はさらに音楽性を強めるため、次作から
「パティ・スミス・グループ」
名義となって、バンドサウンドに発展していきます。
次回は、そのセカンドアルバムをピック・アップします♪
〈オンエア・ソングリスト〉
1. Gloria
2. Birdland
3. Land